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【VRChat】私が見た「サキュバスオオクワガタ」の一部始終

 

バーチャルブロガーの燕谷古雅(つばめや こが)です。

12月に入ったばかりですが、現実世界では今年の漢字流行語大賞などがあり、1年の終わりを感じさせる時期になりました。

バーチャルの世界ではソーシャルVRから生まれた、VRの世界の1年を振り返る「VR流行語大賞」というツイッターの企画がありました。関連のタグの中で「サキュバスオオクワガタ」という謎のワードが入り、一時話題となっています。

 

vr-lifemagazine.com

 

2023年1月7日追記。VR流行語大賞』でまさかの1位にランクイン

おめでとうございます!知らない人でも文字だけで一人歩きした存在ですが、これは驚きましたね。

 

vr-lifemagazine.com

 

今回はVRChatの界隈では謎が多い「サキュバスオオクワガタ」に関するイベントと、私がそれを見て感じた印象をエッセイ風に書きました。

 

注意:この内容は私の意味不明な表現や無理矢理なこじつけ、ジョークが含まれていますので、お気をつけてください。

 

深淵を覗く時、深淵もまたこちらも覗いているのだ。

-フリードリヒ・ニーチェ-

 

私はバーチャルの世界に入ってから半年経った。普段は一人でワールドを歩き回り、SNSや個人ブログで情報を発信して活動している。

大半はQuest単機で活動し、メタバースの文化の知識は浅いゆえに、実際にそれに触れることはあまりなく、無知に近かった。ソーシャルVRの情報はイベントカレンダーやまとめた情報サイト、ツイッターしか見ていない。

 

 

7月のある日、私はVRChatイベントカレンダーで行ってみたいところを物色している合間に見慣れないワードを目にする。

 

サキュバスオオクワガタ商標登録検討会

 

なんだこれは。バーチャルの世界に出てくるクワガタ虫なのか?外国で生息しているコーカサスオオカブトのようなものだろうかと。私は不思議に思ったが、興味が薄かった。

虫のことはさておき、商標登録ときたら、ゆっくり茶番劇のことが炎上になったのが話題になったと聞いたことがある。誰でも商標登録が出来る時代になっているから、それを出願してみようと考えているんだろうな。・・・まあ、いいや。

 

私は興味が無いまま、時が過ぎて行った10月8日の夜。私はフレンドたちとの間で変わったイベントの話が持ちきりになっていた。

深夜11時55分頃に「サキュバスオオクワガタ産業活用講演会」というイベントがあるという。内容は産業を活用して社会的な問題を紐解くという、お堅い印象。私はどういうイベントなのか気になっていた。

私は「サキュバスオオクワガタって何?」と質問した。フレンドは「簡単に言えば吉本新喜劇に近い」と言った。ん、産業活用といったかっちりとした印象と全く違うじゃ無いか?

・・・待てよ?カレンダーに記されたイベントの内容に「ブラックジョークが通じる方」と書かれていることを思い出した。ひょっとして、「バーチャルのコント」!?

VRの世界にはお笑いは存在する。「バーチャルやぶ」とコラボしたきっかけで本物のお笑い芸人が電脳の世界に降り立ったり、逆にバーチャルの世界でお笑い芸人として活動している人がいる。演劇を発表すると聞くと、この世界で「タイプマン」のようなドラマや、「マクベス」のような演劇は存在するが、喜劇(コント)そのものは見たことがない。・・・いや、「VRCお笑い道場」は聞いたことあるが。

何かしら見えぬ裏があるコントは「コント」と呼べないはず。「産業活用講演会」のガワをまとったコントだろうかと私は勘繰った。

考えることが好きな私は、こういうものは深く考えず、電脳の体を感じさせる方だろうかと、自分の頭の中を処理した。「考えるな、感じろ。」だ。

 

深夜11時45分。ジョイン先の主催者を確認。よく見たら場所は「お砂糖マッチング」という、バーチャルパートナーを探すための集会所系のワールドだった。ここで産業活用講演会を行うのか?場所的にメッセージ性のありそうなものだと確信した。「コントのセット」として使っているのだろう。私は興味本位でフレンドと一緒にそのワールドへ向かった。

 

※実話を元に再現しました。

 

深夜11時50分。フレンドと一緒にイベントの会場へ降り立った。人が結構居る。口コミの間で人気のあるイベントだとうかがえる。「産業活用講演会」が始まるまで集会所スペースで待機した。

しかし、待っている時にだんだんと動作が鈍くなってきた。Quest対応のイベントなのにどうなっているんだと確認したら、私のようなQuest単機状態のユーザーが一人もいなかった!・・・え、私だけ!?よく見たらこのワールドのインスタンス定員25人が限界で、今にいる人数は2倍の50人オーバーとなり、動作が鈍くなった。

 

※イメージです。

 

私は慌てて、動作の負担が軽い、よろい姿のアバターをまとい、何かを身に守るようにパフォーマンスの設定をいじったりなど無茶なことをしようとしても無駄たった。

サキュバスオオクワガタ相手に何かか悪さをしたかのように、Questの動作を鈍くさせる。これが動作をおかしくしてしまう「バグ」そのものが入ってきたのだろうか?昆虫だけに?全身に「バグ」がまとわりつき、締め付けるような感覚に陥った。

動作が思うように動けない私はフレンドに向かって「無理です!」声を出して訴えた後、固まった。回線が途絶え、ふっと消えてしまった。

 

ああ、怖い。インスタンスフルの恐ろしさは電脳の体じゅうに伝わってきた。

サキュバスオオクワガタ」は謎のままに終わってしまった。

もう、ダメだ。私は諦めた。

 

 

あれから1ヶ月後。ソーシャルVRの1年を振り返るメタカル大賞という企画があった。私はそれに関連するツイートを眺めていると、そこには「サキュバスオオクワガタ」の文字が並んでいた。え、そこまで流行っていたのか!?私は驚きを隠せなかった。

サキュバスオオクワガターーみんなは知っているけど、どんなものなのか分からない存在。何年か前に「世にも奇妙な物語」で知られている「ずんどこぺろんちょ」のようなものだろうか。電脳世界にあるミームは妙に奥が深いものだ。

ネタバレがあっても構わないと思っている私は、情報の穴を掘るように、どんなものなのか目を通した。クワガタムシの姿はいなかったようだ。何か裏があるに違いない。気になるところがある画像を追うと、私は大変なものを見てしまった

 

サキュバスオオクワガタはサキュバスのクワガタ。姿そのものが名前の通りだった。

サキュバスは色欲あふれる女の姿をした悪魔。ゲームとかで聞いたことがある。サキュバス特有の色香で昆虫のフェロモンのように惑わせ、クワガタムシアゴで挟むように脚で締め付けるモンスターのようなものなのか?私は必要以上に妄想を掻き立てられていた。

私は興味本位でツイートの奥底の方へ辿ると、日付は2022年1月と書かれていた。そんなに長くやっていたのか!?

その関連イベントを見ると、被害者集会や反省会があった。サキュバスオオクワガタは何をしていたんだ、一体何ものなんだ!?

常人ですら理解し難く、想像を絶するほど恐ろしいものだろうかと。謎が深まるばかりだった。

 

12月。「バーチャルマーケット2022Winter」が始まったばかりの3日。私は「サキュバスオオクワガタ」に関するイベントの情報をキャッチした。

その内容はサキュバスオオクワガタが悪質な組織票を受け、緊急で対策を検討するという。もしかして、ツイッターで自然発生した、あのタグで埋め尽くそうとしたことではないかと思った。

バズるといった、無の中で自然と起こりうる現象。それを生み出す「インターネットミーム」という視覚的に見えない要素を、私は何かを感じ取った。

電脳世界で良くも悪くも印象に残る女の悪魔「サキュバス」という存在を、「オオクワガタ」という前者の要素と無関係な言葉の部分を融合し、「サキュバスオオクワガタ」というインパクトあふれるミームを生み出す。メタバースという普遍的な電脳世界へ降り立ち、さまざまな化学的な反応を引き起こす。政治や経済といったお堅い部分から人間関係、NFTやブロックチェーンなどのテクノロジーまで、深淵の奥底へ沈み込むように精神へと汚染させる。そのミームSNSの方へ広がり、このような「悪質な組織票」として発生させているのだ。

実に面白い。意味が深い内容だな。ちょうど良いからこれはチャンスだ。生の姿をどんなものなのか、私の目で確かめてみたい。

 

12月3日。私は時間潰しに打ち込みを終え、「さあ、やるぞ!」と気合を入れて、私はQuestを被り、電脳世界に入った。

 

 

深夜11時50分前。例のイベントの会場に降り立った。

向こうはごちんまりとした聖堂。周りは何もないようなワールドだった。

イベント主催である、昆虫研究家のこんちゃんが立て札を持って何か準備をしているようだ。しばらくした後、人が次々とやってきた。気がついたら一瞬と40人近く集まった。ウワサ通りすごいイベントだなぁ。

動作の方は大丈夫なのかと私は不安に思いながらも、パフォーマンス設定をいじり、ほとんどの人の姿は見えない状態にし、ショーが始まるまで待機した。

 

昆虫研究家のこんちゃんが立て札のスライドを出し、説明をしたところで始まった。

 

 

なになに?サキュバスオオクワガタの基本的な説明と、その対策が書かれている。

昆虫研究家のこんちゃんは「サキュバスオオクワガタ」についての内容、その目的、今回のテーマとなっている組織票の問題など詳しく説明した。

 

 

深夜24時にこのイベントのような人が集まるところでやってくるのか。これは面白いが、あの虫に襲われそうで大丈夫なのだろうかね?

 

 

なになに?メタバースの世界でサキュバスオオクワガタを捕まえ、それを利用して大金持ちになる?何だか夢のあるような話だな。

サキュバスオオクワガタを利用して、ありとあらゆる分野で反映させる目的か。確かに興味深い。

 

 

今回のテーマである、「悪質な組織票」についての説明。組織票を促した犯人を突き止めることと、サキュバスオオクワガタのワードに対抗するための対策。そして、ソーシャルVRの界隈でよく起こりがちの「お気持ち」でぶつけようと呼びかけた。

途中でブーイング、トマトをぶつけるなどで場を盛り上げた。(ブーイングはご愛嬌としてとらえているようだ。)

 

 

みんなの心が一つになって集合写真。みんなの力を合わせてサキュバスオオクワガタを捕まえようと誓った。(※Quest単機なので動作の負担がかからないようにアバターをほとんど非表示にしています。)

 

深夜0時05分。時間が経っても「サキュバスオオクワガタ」がまだ現れない。昆虫研究家のこんちゃんはスライドが更新されていないと気づき、アバターのデータを確認と更新するため離席した。

待っている間、色々と雑談して時間を潰した。不安な気持ちが残っているが、本当に大丈夫だろうか。すると、みんなが気づいていない方向から見慣れない人が現れた。

 

※ネタバレのためモザイクをかけています。画像をクリックするとモザイクなしの姿が見れます。

 

薄紫色の縦巻きロールのツインテール、ボンキュッボンのプロポーション、オイルを塗ったかのようなテカリのある褐色の肌。赤色のドレス姿。サキュバスに見えるが、ただのサキュバスではない。虫のように空を飛び、クワガタムシアゴのように脚で挟む。

電脳世界に生息する昆虫(バグ)、これが「サキュバスオオクワガタ」だ!

 

私は身を守ろうとカメラを持って身構えていた。参加者たちはサキュバスオオクワガタの「洗礼」にやられ、次々と倒れてしまった。ウワサ通りおそろしいものだった。

よろい姿のアバターの私はサキュバスオオクワガタに立ち向かおうとしたら、目の前に現れ、「本当に強いじゃないのぉ〜♡吸い取ってあげるわぁ♡」などと言った後、「洗礼」を受けて倒れてしまった。このなりでやられるとは思わなかったな・・・。

 

集まった人の力をたくさん吸い取ったサキュバスオオクワガタは満足し、姿が消えてしまった。

しばらくした後、昆虫研究家のこんちゃんが戻ってきた。虫を見つけられなかったと言い訳した後、イベントは無事に終えた。

 

 

サキュバスオオクワガタ」というバーチャルコントは口コミの通り、本当に面白かった。

PC&Quest両対応のイベントだが、人気が高いゆえにインスタンスフル、動作の負担が重くてQuest単機ユーザーが弾かれてしまうことがあった。イベント主催者はQuest単機ユーザーでも見てほしいために大変苦労しているようだ。私は気になってどうしてもこのコントを見たい気持ちがあった。Quest単機で無事に終えて良かった。

バズったり口コミで広げるような、自然発生する文化。あの「おじさん回し」や「おきんきんランド」、「授乳カフェ キタリナ」などにも通づる、VRChatの日本人コミュニティーの世界で自然と広まることは素晴らしいものだと感じていた。

 

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ブラックジョークを表現するため、最近あった出来事や現実世界の時事ネタなどを交え、それを「ギャグ」として伝え、「サキュバスオオクワガタ」の奥深さを引き立てる要素。それによってバーチャルに住まう人たちの笑いを与えてくれた。

サキュバスオオクワガタ」はメタバース世界で「笑い」の化学反応を引き起こした。

 

昆虫(バグ)。

日常で見かけるようなものから、限られた世界だけ生息しないものまで幅広い存在。「サキュバスオオクワガタ」という、動作面に厳しい環境で生息している珍しい昆虫は、タシカナメ(確かな目)を見て「サキュバスオオクワガタとの電脳記録(サキュバロク)」を残した。

私は珍しい虫を追う昆虫研究家のこんちゃんのような同じ情熱を感じた。

 

サキュバスオオクワガタよ、良いものを見たぞ。

ありがとうな。

 

ばたんきゅー。

 

※1月7日、VR流行語大賞に選ばれたことを受け、昆虫研究家のこんちゃんがやるそうです。