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「VR元年」の10年間 VRChatブームのビッグウェーブは来たのか?【コラム】

 

どうも、バーチャルブロガーの燕谷古雅(つばめや こが)だ。

最近、アニメ映画『超かぐや姫!』をきっかけにVRChatをはじめた人が増えているらしいな。流行りの波というやつは本当に侮れない。企業や業界、著名人、さらには身内までもが「VR・メタバースってどうなんだ?」と興味を持ちはじめている。話題が次から次へと湧いてくるんだよ。

3月8日まで開催されていたサンリオのバーチャルフェスティバルも、『超かぐや姫!』のVRライブを中心に、これまでにないほどの反響だったな。そして20日からの「バーチャルホビーフェス」では、有名な版権作品まで展示されるという。企業の動きが明らかに加速しているんだ。

こういう流れを見ると、またしても聞こえてくる言葉がある。「VR元年」だ。何度でも繰り返されるそのフレーズ、本当に今度こそ大波が来ているんじゃないか?・・・そうだよな!?

というわけで今回は、「VR元年」という言葉とVRChatについて、私なりに感じたこと、思ったことをまとめてみたぞ。浮かれているだけじゃない、自分視点も交えて語っていこうじゃないか。

 

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おことわり

この記事には、筆者個人の見解が含まれています。

人それぞれさまざまな考え方がありますので、その点をご理解のうえお読みいただけますと幸いです。

 

はじめに「VR元年」って?

VRとは、バーチャルリアリティ(Virtual Realty)略であり、日本語では「仮想現実」と訳される言葉である。

VR元年」という言葉が広く使われたのは2016年前後だ。2017年にVRChatがリリースされる以前、ちょうどPlayStation VRやOculus RiftといったVR機器が一般層にも注目され、テレビや新聞、SNSで盛んに取り上げられていた時期である。

VR機器が売れ、ハイスペックPCの需要が高まり、「仮想空間で遊ぶ」という体験が未来のスタンダードになるかのような空気が漂っていた。VRSNS(ソーシャルVR)のユーザーも急増し、業界全体が熱を帯びていたタイミングで、この「VR元年」というフレーズが使われていたのだ。

しかし、その熱狂は長くは続かなかった。

2017年のVTuberブームをきっかけに、2018年以降はスマホひとつで"アバター配信"ができるアプリ、たとえばREALITYのようなサービスが登場する。また、同じく2017年配信開始の『Fortnite』が世界的ヒットを記録し、オンラインゲーム市場が大きく盛り上がった。

その結果、「高価なVR機器を用いる体験」よりも、「手軽に参加できるデジタルコンテンツ」に注目が集まるようになる。世間の話題はVTuberやバトルロイヤルゲームへと移り、「VR元年」という言葉は徐々にメディアの表舞台から姿を消していった。

あれほど未来の象徴のように語られたVRは、このまま波に飲まれて消えてしまうのだろうか。

 

それともーー

何度目かの「VR元年」が、また静かに始まっているのだろうか。

 

 

2017~2018年・VRChat黎明期

2017年2月1日、VRChatがSteamにてリリースされた。当時の日本国内での知名度はほぼゼロに近く、2017年以前に日本人がVRChatを始める明確なきっかけはほとんど存在していなかった模様だ。

転機となったのは、同年11月ごろである。

「バーチャルのじゃロリ狐娘おじさん」として知られるねこます氏や、「VTuber四天王」の一人として名を馳せたミライアカリ氏がVRChat関連の動画を投稿したことがきっかけとなり、日本人ユーザーが徐々に流入し始めた。

特に2017年12月から2018年1月にかけては、海外発のミーム拡散も重なり、ユーザー数が一気に急増。わずか1〜2か月でアクティブユーザーが10倍以上に増加したともいわれ、まさに爆発的成長の時期であった。

一方で、権利周りの問題や荒らしの温床となるアバターなど、当時を知る人々の間では"語り尽くせない出来事"も山ほど存在する。今だからこそ言えるが、あの頃は良くも悪くも無法地帯に近い側面があった。

 

それでも、そこには確かに熱があった。

文化もルールも整備途上。だが同時に、「何かが始まっている」という高揚感がコミュニティ全体を包んでいた。混沌と熱狂が同居していた時代である。

後に語られることになる、VRChat黎明期の幕開けだ。

 

参考資料

VRCコミュニティ日本史~黎明期編~|ケイロカミオカ

 

youtu.be

動画:「バーチャルのじゃロリおじさん」のこと、ねこますさん

 

2020年・コロナ禍のオンライン飲みとVRハロウィンの存在感

2020年1月。未曾有の新型コロナウイルスの蔓延により、レジャー施設や博物館、飲食店、各種イベントは大きな打撃を受けた。外出自粛が当たり前となり、リアルでの集まりは一気に制限されることになる。

その流れの中で注目を浴びたのが、動画通話アプリ「Zoom」である。リモートワークの普及とともに、画面越しに酒を飲み交わす"オンライン飲み"がメディアで盛んに取り上げられた。

実はコロナ禍以前から、VR機器を装着して行う"VR飲み"という文化は存在していた。しかし当時のVRは、世間的に大きなトピックとして扱われることは少なかった。オンラインのみの主役はあくまでZoomなどの2Dツールであり、VRSNSはやや静かな立ち位置にあった。

そんな中で存在感を示したのが、国産のVRプラットフォーム・clusterである。ハロウィンイベントの中止を受け、渋谷区公認の「バーチャル渋谷」を展開。リアルでは実現できなかった仮装イベントを、アバターを楽しむオンラインハロウィンとして開催し、大きな話題を読んだ。

 

画像

写真:2022年 バーチャル渋谷 au 5G ハロウィーンフェス(cluster)

 

リアルが止まったからこそ、バーチャルが動いた。この象徴的な出来事は、VRの可能性を改めて示すものだったと言える。

しかし、その後2021年秋に「メタバース」ブームが再燃するまでの間、「VR元年」という言葉は半ば"オワコン扱い"されかけていたのも事実である。

それでも、水面下で文化は育っていた。静かに、しかし確実に、VRは生き続けていたのだ。

 

2021~2022年・メタバースブーム

2021年10月、Facebookの業績悪化予測を背景に、「メタバース」という言葉を掲げて本格的に方向転換を測った、そして社名をMetaへと変更する。

創業者のマーク・ザッカーバーグ氏は、仮想空間に力を注ぎ、SNS企業からメタバースの企業へと進化することを宣言。「ユーザーがVRヘッドセットを装着し"メタバースへテレポート"して、仮装世界でリアルなコミュニケーションを行う」という未来像を打ち出した。

社名変更に伴いブランドも再編され、Oculus Quest2からMeta Quest2へと名称が変わる。まさに"メタバース特需"の時代であった。

この流れを受け、VRChatやclusterといったVRプラットフォームの利用者が急増。特にVRChatでは、PCを持たないQuest単体ユーザーが一気に増え、いわゆる"Quest界隈"が形成されるほどの盛り上がりを見せた。

また、2025年開催予定の大阪・関西万博を見据え、clusterでは「バーチャル大阪」を展開。万博とバーチャルを結びつける取り組みも行われた。(・・・最終的には独自VRプラットフォーム路線に落ち着いたが)

 

ファンタズムセブン(2021年、VRChat)。メタバースの皮肉も込められている。

 

2021年・混沌と誤解の拡大

一方で、当時の「メタバース」という言葉の定義は曖昧であった。

メディアや一部事業者は、ZEPETOといったスマホ向けサービスや、『Fortnite』や『Final Fantasy XIV』、『Minecraft』など既存のゲームまで"メタバース扱い"され、議論も多くあった。さらにNFTや仮想通貨といった投機的ビジネスと強く結び付けられた。

 

仮想通貨のイメージ(写真:写真AC)

 

その結果、一般層にとってはやや胡散臭いイメージも広がっていく。情報商材系の怪しいオンラインセミナーがclusterやRiumといった国産のVRプラットフォームを中心に急増し、VRChatまでもNFT関連の質問が殺到。VRChatやclusterのようなVRSNSのユーザーとコミュニティ文化はWeb3の投機文脈と必ずしも一致しておらず、ユーザーから「同じ"メタバース"に一緒にくたにされて迷惑だ」という反発があった。

2022年1月、VRChat公式は「ブロックチェーンやNFTとの統合は行わない。プロモーションや勧誘は禁止」と明確に声明を出すに至った。同年、情報商材界隈からRiumに集中していた時期もあった。

「既存のゲームまでメタバース扱い」「スマホ向けサービスが"メタバース"を名乗る」「NFT・仮想通貨と情報商材の温床」「一般層に胡散臭さが広まった」という当時の感覚は、良くも悪くも熱狂と混沌が同居していた時期である。

 

www.youtube.com

2022年の動画。clusterでは情報商材に対するカウンター的なセミナーイベントがあった。

 

2022年・メディア露出と再加速

2022年1月、テレビバラエティ番組「マツコ会議」でメタバース特集が組まれ、その影響でMeta Quest2は再び品薄になるほど売れた。この流れでテレビ番組のVR特集やVRChatを始める人が増え、同年2月には初心者向けの入門書「VRChatガイドブック〜ゼロからはじめるメタバース〜」も出版。VRと一般層への浸透が進んだ。

さらに2022年6月、キノピオPro氏による『ロマンスの神様』のフェイスダンス動画がVRChat発でバズり、本家の広瀬香美本人の目に触れるという象徴的な出来事もあった。これをきっかけにVRChatを知る人も増加。当時はまさに"第二波"の熱狂である。筆者である私も、この頃にVRChatへ本格的に足を踏み入れた。

同時期には、引きこもり支援、不登校支援、婚活イベント、バーチャル旅行、仮想空間を使った学校、行政やNPO法人など、メタバースをビジネス利用や社会活用する動きも広がっていた。単なるブームではなく、実社会との接点も確実に増えていたのである。

 

2023年・幻滅期へ

しかし2023年に入ると、過度な期待に対して現実の収益が追いつかず、撤退や縮小が相次ぐ。いわゆる"幻滅期"へ突入した。

 

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バーチャル道頓堀でダイブしよう集会(阪神日本シリーズ優勝時)

 

VRSNSを中心に扱うテレビ番組「金曜日のメタバース」の放送や、阪神タイガース優勝時のバーチャル道頓堀ダイブ企画がメディアの間で話題になるなど、メタバースの火種はあったものの、その全体の勢いはやや沈静化していった。

再び、「VR元年」という言葉は波にさらわれていくのか。

2024年になっても、その未来は見えづらかった。

 

・・・はずだった。だがーーー

 

2024年・スタンミショック

2024年6月。ここからVRChatに大きな転機が訪れる。

人気ストリーマーのスタンミじゃぱんがVRChatに興味を持ち、視聴者から募集したマシュマロ投稿をきっかけに動画を公開。そこから徐々に注目を集めていった。

特に「ボイチェン人狼」動画を機に方向性が変わり、"主催者目線"から"お客様目線"へとシフト、VRChatを体験する側としてのリアクションや出会いがコンテンツ化され、視聴者の関心を一気に引き寄せた。

同年7月24日、1対1対話ガチャワールド「NAGiSA」にて、宇宙人アバターのユーザー・トコロバ(所場)氏と初対面する動画がYouTubeで爆発的に再生数を伸ばす。この一本をきっかけにVRChatを始めた人も少なくなった。

 

スタンミショックの変化(Googleトレンド:2023年7月〜2025年7月)

 

動画の影響でFUJIYAMAやNAGiSAといったワールドの来訪者が急増。アクセス数は目に見えて跳ね上がった。いわゆる「スタンミショック」である。

 

youtu.be

「スタンミショック」の象徴的な動画。スタンミがNAGiSAでトコロバと出会う。

 

2024年・光と影の同時発生

しかし、初心者の急増は環境の変化ももたらした。

パブリックの集会場の空気は一変し、既存のユーザーからは「素直に楽しめない」「パブリックは見せ物ではない」「落ち着いて酒が飲めない」など、不満も噴出した。

さらに、スタンミ氏がきっかけにVRChatを取り上げる配信者の増加に伴い、版権物やゲームなどのリッピングアバター・ワールドが映り込む問題や、迷惑行為の拡散なども発生。良くも悪くも注目が集まった結果である。

もともと大規模な視聴者基盤を持つストリーマーであったことから、既存の活動者への影響も大きく、嫉妬や反発も生まれた。いわゆる"お気持ちNote"が投稿され、議論が加熱する場面も見られた。

盛り上がりと摩擦が同時に起きる。それが「スタンミショック」の本質だったと言える。

 

2025年・ブームから定住へ

2025年2月、「VRC仮想大賞2」以降、スタンミ氏のVRChat動画の更新頻度は急激に減少。ブームは徐々に落ち着きを見せる。

 



2024年のスタンミショックとその後のGoogleトレンド。年を越してもキープし続けている。

 

だが重要なのは、その間に流入したユーザーの一部が"定住"したことである。2025年12月地点でも、VRChatのGoogle検索割合は「スタンミショック」以前の約2倍を維持していた。ブームは去っても、人口は底上げされたのだ。

一方で、Metaはメタバース事業からAIメガネやウェアラブル分野へ投資の一部をシフト。「メタバースは終わった」といった論調を掲げるメディアも徐々に増えてきた。

しかし、ECサイト「BOOTH」ではアバターなどの3Dモデルの年間取扱高が2025年に約104億円を突破しており、VRを中心とした"同人ノリ"のクリエイター文化が根強く続いていることがうかがえる。

大手企業の戦略とは別のところで、コミュニティ主導の文化がしっかり息づいているのが、今のVR界隈の面白いところだろう。

 

しかし、「スタンミショック」を超える目立った話題が現れないまま、「VR元年」という言葉は再び波にさらわれるかに見えた。

2026年2月、誰も予想していなかった、「スタンミショック」を超える爆発的ムーブメントが起きるとも知らずにーーー

 

2026年・そして今。『超かぐや姫!』が生んだ大波

2026年1月22日、アニメ映画『超かぐや姫!』がNetflixで配信開始された。有料配信作品でありながら予想外の注目を集め、SNSを中心に一気に話題化。その反響を受け、2月20日からは劇場公開も実施されるようになった。

劇中ではVTuber、eスポーツ、VOCALOID、VRSNSといったデジタルカルチャーが大胆に取り入れられている。それが強いフックとなり、口コミで拡散。「とりあえず観てみるか」という軽いノリから一気に火がついた。特にVRユーザー層の動きは顕著だった。

転機となったのは、サンリオのVRイベント「Sanrio Virtual Festival」での展開である。2月14日から『超かぐや姫!』のかぐやによる無料VRライブが開催されると発表されたことで、ライブ目当てにVRChatを始める人が爆発的に増加した。

 

2月15日、Sanrio Virtual Festivalの3DかぐやVRライブの様子。

 

14日は機材トラブルで中止になったものの、翌15日12時のVRChatの同時接続者数は15万6716人を記録(※2026年元旦の最多同時接続者数148,886人を抜いた)。数字としても"波"が可視化された瞬間である。

 

2月15日、VRChatのコミュニティ責任者tupper氏のポスト

 

3月7日の追加演出の様子。

 

最終日の3月8日12時には、フィナーレとなる最終ライブが開催された。前日の7日には、吹き出しが湧き出すような演出など新たなギミックが追加されたことが明らかになり、それを観ようとすでにライブを体験したユーザーまで殺到。その結果、同時接続者数は15万8192人を記録した。

この日は、先月28日に公開された話題の釣りゲームワールド「FISH!」にも多くのユーザーが集中しており、かぐやのVRライブと並ぶほどの賑わいを見せていた。さらにゴールデンタイムにあたる北米のユーザーの流入も重なり、VRChat全体が一気に活気づいた時間帯だったと言えるだろう。

 

 

さらに、VRChat内では「ツクヨミ」や劇中の住居を再現するファンメイドワールドが次々と制作され、キャラクターのコスプレ改変も急増。ユーザーコミュニティ全体が『超かぐや姫!』一色に染まりつつあった。

2月22日には公式が「ツクヨミ感謝祭」のクラウドファンディングを発表。支援金を用いて、VRChatに公式ワールドとオンラインVRライブを制作するという本気のプロジェクトである。開始から1時間足らずに目標額100%を達成し、1週間後には800%に到達。追加アップグレードも決定した。

 

ここまで来ると、単なる作品ヒットではない。

コンテンツがさまざまなVRへ流入し、ユーザーが増え、企業や配信者、クリエイター、著名人までもが関心を持ち始める。参入の可能性も一気に広がる局面だ。

最近になり、「全く新しいVRのサービス」と「カメラの要らないテレビ電話」を謳い、スマホを利用した国産の新SNSサービス・POPOPOが発表されたばかりだ。

このように日本国内がVRの注目が広がりつつある。

 

この規模の波が来たとき、人はこう言う。

 

「またVR元年だ!」と。

 

何度目かはわからない。だが、確実に言えることがある。

2026年のこの瞬間、VRの熱量は間違いなく上昇している。

 

最後に

今回は「VR元年」という言葉を軸に、この10年の流れを振り返る長文コラムを紹介した。

内容はあくまで個人的な主観を多分に含んだ歴史的記録であり、自分が気がついたこと、感じたことなどを整理したものである。ブームの大波に乗り、やがてブームが去って波に流される。VRの歴史は、まさにその繰り返しだ。

VR機器の登場、VTuber四天王によるVRChat紹介動画、コロナ禍によるイベント中止、メタバースブーム、スタンミショック、そして『超かぐや姫!』旋風。節目となる出来事は立て続けに起きている。

 

波は何度も来る。

そして、そのたびに「これが本当のVR元年だ」と言われる。

 

「乗るしかない、このビッグウェーブに」

 

かつて新型iPhone発売時の行列から生まれたネットミームは、今も色あせない名言である。流行というものは、後から振り返って初めて"あれは波だった"と気づくものだ。

次の大波がいつ来るのかはわからない。

いや、もしかするとすでに来ているのかもしれない。

私たちがそれに気づく前から、世間の"流行"は静かにうねり始めている。

 

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