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【VRChatイベント】これまでのVR演劇が凄すぎた!「呪われ魔女と海賊一家」レビュー

 

どうも、バーチャルブロガーの燕谷古雅(つばめや こが)だ。

取材時(2025年11月20日)、私はメタシアター演劇祭のプログラムのひとつ、VR演劇「呪われ魔女と海賊一家」ゲネプロにご招待されたんだ。

実際に観てみると、これまでのメタシアター演劇祭のどの作品とも違う、まるで現実と幻想が錯綜するような演出に驚いたぞ。まさにVRならではの"劇場体験"だったな。

そこで今回は、VR演劇「呪われ魔女と海賊一家」を観たときの印象やレビューをお届けするぞ!

 

呪われ魔女と海賊一家

ふと目を覚ますと
記憶を失い見知らぬ部屋にいた

そこには魔女の使い魔が

彼が言うには私は死ぬ直前で
ここに呼び出されたそう

そして迫られる
魔女になるかのどうかの選択

けれどその選択は
死にいたるまでの物語を
共に辿ってからと

映し出される過去の景色
少しずつ少しずつ
記憶をたどっていく・・・・・・

 

この演劇は童話『ピーターパン』をモチーフにした完全オリジナル作品であり、脚本は魔女ヒナミィさん(@HINAhitomi_v)、演出はSuzuQuiさん(@suzuqui_q)が手がけている。

物語は、記憶を失った少女が魔女の使い魔に呼び出され、「呪いの魔女」として生きることになった瞬間から大きく展開していく。ピーターパンの裏テーマともいえる、"大人になりたくない子ども"とは対照的に、今回は"子供のような大人に振り回され、大人にならざるを得なかった者たち"の世界線が描かれている。

公式サイトのストーリー紹介では、「まるでロミオとジュリエットのような胸騒ぎ」「本当は怖い童話のような」「結末の余韻を海の底で漂うように・・・」といった表現が並び、観客の想像を一気にかき立てる。情報量の濃さと展開の速さに、まさに"息をつく間もない"演劇体験になることが予感される作品だ。

 

動画はこちら

www.youtube.com

 

独自の専用劇場とこれまでにない演出


これまでメタシアター演劇祭では、「総合芸術劇場Drampia」といった専用劇場が用意されてきた。しかし、「呪われ魔女と海賊一家」では、作品専用に設計された独自の劇場が用意されている。公演前に撮影された画像を見る限り、ステージと花道を備えた一般的な劇場のように思えるが、実際に観劇してみると"とんでもない仕掛け"が待っていた。

 

 

物語のシーンが切り替わる瞬間、左の画像のようにステージ下からもう一つのステージがせり上がる演出が突然始まる。さらに、家屋の壁が開くように取り払われ、ドリフのコントのように大胆なセットチェンジが行われるなど、現実の劇場では到底不可能な大掛かりな転換が、VRでは容易に実現されていた。

 

 

驚かされたのはそれだけではない。花道から大量の水が噴き上がり、後ろから海賊船が通過するという衝撃的な演出まで登場した。まさに"VRならでは"の表現であり、現実の舞台では不可能なスケールの舞台体験が味わえるのだ。

これまでのメタシアター演劇祭で使用した専用劇場では、CatsUdon(カツドン)と呼ばれるシステムが搭載されており、上演中に小道具から大道具まで柔軟に出し入れできた。しかし「呪われ魔女と海賊一家」の劇場はそのシステムを使用しておらず、完全にワールド独自のギミックによって制御されている。

この専用劇場を制作したのは、ワールドクリエイターのLinxさん(@D_Guardians)。clusterではブラックジャックのゲームワールド「カジノ バニー×バニー」で知られ、複雑なギミックを巧みに使うクリエイターとして評価の高い人物である。その技術力が、今回のVR演劇で存分に発揮されていた。

ゲームワールド製作者ならではの発想と技術が演劇に活かされることで、現実では叶わないダイナミックな演出を実現できる。これこそ、VR演劇の可能性を象徴する好例だといえるだろう。

 

演者のアバターがVRoid製でコスパを実現

この演劇で特筆すべきは、演者全員がVRoid製アバターを使用している点である。多くの演劇では、BOOTHなどで販売されている既製アバターをベースに改変するケースが一般的だが、その場合は衣装外注やアバター購入のコストが発生し、さらに配信時には権利面の配慮も必要となる。

その課題を解決したのが、権利フリーかつ無償で利用できるVRoidだ。脚本を担当した魔女ヒナミィさんは、演者としてだけでなく、VRoid衣装制作の経験を持つクリエイターでもある。自身の経験を活かし、作品の世界観に合わせたアバターを一から制作することで、コストを抑えつつ統一感のあるビジュアル表現を実現した。

従来のVR演劇ではハードルの高かったアバター周りの問題も、制作経験を持つ演者やスタッフが協力することで大幅に負担を軽減できる。VRoidを活用した今回の取り組みは、今後のVR演劇制作におけるひとつのモデルケースになるだろう。

 

最後にレビュー

物語のストーリーは、『ピーターパン』の裏テーマとわかるような構造を的確に掴んでいる。大人になろうと必死にもがく子どもの姿と、逆に"大人なのに大人でいられない"者たちの心理描写が交錯し、シーソーゲームのようなドラマが展開される。その対比が物語全体の緊張感を生み、観客を強く引き込むポイントとなっている。

こうしたテーマ性に加え、専用劇場の演出と独自制作のVRoidアバターが見事に噛み合っているのも本作の大きな魅力だ。舞台装置の切り替わりや構造変化といったVRならではの大胆なギミックと、世界観に合わせてデザインされたアバターが相互に作用し、リアルでは実現が難しい"没入感演劇"を成立させている。

演者やスタッフの多くは、VRVR演劇の界隈で繋がりを持つメンバーで構成されており、それぞれの得意分野を活かし合う形で作品が作られている点も印象的である。ソーシャルVRで築かれた縁が、そのまま創作の形となり、舞台の完成度に反映されている好例だと言える。

総じて、本作はテーマ性・演出・アバター表現・チームワークのいずれも高いレベルでまとまった、これまでにないタイプのVR演劇である。ソーシャルVRだからこそ実現した強度のある作品であり、今後のVR演劇の可能性を示す一本だと感じた。

 

呪われ魔女と海賊一家

公演日

2025年11月21日(金)・23日(日) 夜22時〜23時

 

公式Webサイト

https://xfolio.jp/portfolio/VKILL/free/1258498

 

公式X(Twitter)アカウント

@VRC_witch

 

メタシアター演劇祭2025

開催期間

2025年11月16日(日)〜24日(月)

 

公式Webサイト

https://sites.google.com/metatheatervr.org/meta-artfes2025/top

 

公式X(Twitter)アカウント

@MetaTheater_VR

 

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