【小説】ソーシャルVRの生活を描く小説「フルトラッキング・プリンセサイザ」と「フルトラッキング」とは何？

どうも、バーチャルブロガーの燕谷古雅（つばめやこが）だ。

仮想空間について、どんなイメージを持っているだろうか。多くのクリエイターが描く仮想世界は多様だ。例えば、「ミルキーピア物語」や「VRおじさんの初恋」といった物語がある。最近は「VRおじさんの初恋」のドラマが終わり、感動の声が多数あった中で、注目されているのが「フルトラッキング・プリンセサイザ」だ。これはバーチャル美少女ねむ（@nemchan_nel）さんの推薦により話題になっているんだ。

今回は架空のソーシャルVR世界で過ごす主人公の人物像について描く「フルトラッキング・プリンセサイザ」と、物語内で扱われる「フルトラッキング」という技術ついて紹介するぞ！

フルトラッキング・プリンセサイザとは

第5回「ことばと新人賞」受賞作、池谷和浩『フルトラッキング・プリンセサイザ（書肆侃侃房）』は架空のソーシャルVR世界を題材にした小説。主人公が毎夜ソーシャルVRで様々な「王女」との交流するバーチャルな表現だけでなく、主人公のリアルな人物像や特性と認知について考える複雑な内容となっている。

※性的な表現も含まれているため、読む時は注意が必要。

【あらすじ】

映像や３DCGを扱う制作プロダクションに務めるうつヰの一日は長い。今夜バスタオルで体を拭くのを忘れないようメモするアプリケーションには何が最適か。部長の言うユーキューは「有給」なのか「有休」なのか？仕事を終えると「プリンセサイザ」にログインする。京王線沿線の各駅に配置された王女たちと、仮想空間システムを渡り歩けるソーシャルVRの中で交流するのだ。選考会で激賞された第5回ことばと新人賞受賞作「フルトラッキング・プリンセサイザ」ほか、一年後をつづった「メンブレン・プロンプタ」、うつヰの学生時代を描いた「チェンジインボイス」を収録。

引用元：「フルトラッキング・プリンセサイザ」原文ママ

【近刊情報】
『フルトラッキング・プリンセサイザ』池谷和浩
装丁　成原亜美（成原デザイン事務所）
装画　盛圭太「Bug report (Circuit)」… pic.twitter.com/s89W63hrwv
— 書肆侃侃房 (@kankanbou_e) 2024年4月8日

この小説とバーチャル美少女ねむの接点

主人公がフルトラッキングを利用してリアルなVR生活を描くために重要参考資料となったのが、実際にVR世界でフルトラッキング（後述）を利用して暮らす“メタバース原住民”のバーチャル美少女ねむの著書「メタバース進化論（技術評論社）」。この本は2021年当時のソーシャルVRの生活とそれに関するアンケートがまとめられている「国勢調査」のような内容となっている。

バーチャル美少女ねむ『メタバース進化論（技術評論社）』は、「フルトラッキング・プリンセサイザ」の最重要参考書籍の一つです。いま開催されている代官山蔦屋書店の池谷による選書フェアでも一緒に並べていただきました。言語芸術とメタバースを往還する起点となったねむさんとお話します。 https://t.co/rnUDlgX5lH
— 池谷和浩 (@iketanikazuhiro) 2024年5月20日

トークイベント

本書「フルトラッキング・プリンセサイザ」の刊行を記念して、6月21日（金）21時に池谷和浩とバーチャル美少女ねむによるトークイベントをライブ配信される。バーチャル美少女ねむは自身の小説「仮想美少女シンギュラリティ」を執筆しており、仮想と現実の双方からソーシャルVRの未来について考えている。

小説の感想や執筆に関するエピソードなど、本書の内容を軸にしたトークが行われるため、本書を読了した上での参加をお勧めである。

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フルトラッキングとは何？

フルトラッキングとは、全身の身体（フル・ボディ）の位置と動きを追跡（トラッキング）し、リアルタイムでアバター（仮想の体）と連動させる技術。これを使うとVR世界への没入を感じ、アバターがまるで自分自身の身体が取り憑いたように動くことができる。ソーシャルVRの間では非常に人気の高く、ダンスや演劇など幅広く使われている。主なフルトラッキングを利用した機材は「VIVEトラッカー」「HaritoraX」「mocopi」である。